機関誌『日本の息吹』特別号【安倍晋三元総理追悼号】にご寄稿頂いた追悼文を
順次ご紹介させて頂きます。
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和田政宗 参議院議員
安倍総理は平成29(2017)年5月3日の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の「公開憲法フォーラム」で、現行憲法に自衛隊を明記する憲法改正を訴えた。憲法改正運動において、緊急事態条項の創設を9条改正の前に行ったほうが良いとの意見も増えてきた時であった。
しかし安倍総理は、真に国家国民のための憲法改正を優先すべきであると、9条への自衛隊明記を訴えた。実は、9条改正を優先して訴えるということは、この前月にお会いした時に私にお話しくださっていた。憲法を改正し、いついかなる時も国家国民を守れる日本とする。国防に身を賭す自衛隊の違憲論争に終止符を打つ、それが安倍総理の思いであった。
私はこの年の衆院選で、選挙広報統括として安倍総理総裁出演の自民党CMのコメントを全て書いたが、CM冒頭で「豊かで平和な日本を守り抜く」と、安倍総理に言って頂いた。戦後レジームから脱却し憲法改正を成し遂げるのはなぜか。安倍総理に近しくご指導いただく中で、「豊かで平和な日本を守り抜く」ことが安倍総理の究極の目標と考えたからだ。
真に豊かで平和な日本を守り発展させ、美しく強く輝く国としていく。安倍元総理の遺志を受け継ぎ憲法改正を必ず実現する。憲法改正が成った時、「しっかりとした日本になりますね」と笑顔で安倍元総理が現れるのではとの錯覚にとらわれる。私達の心の中に安倍元総理は生き続けているのだ。必ず憲法改正を成し遂げ、墓前に報告する。
石平 評論家
7月8日に壮絶な暗殺死を遂げた安倍晋三元首相が、日本、そしてアジアのために残した大いなるレガシーの一つは、自由世界による中国包囲網の構築と完成である。
第一次安倍政権では、「自由と繁栄の弧」という名の戦略理念と、「自由で開かれたインド・太平洋」という斬新な地政学的概念を持ち出し、覇権主義的独裁国家の中国を周囲から封じ込めるための国際的枠組みの構築を目指した。
第二次安倍政権発足後は、「地球儀を俯瞰する外交」を積極的に展開し、同盟国や西側友好国との関係強化に努めた。特に米国のトランプ大統領との固い信頼関係のもとで自由世界の対中国政策をリードする役割を担い、G7首脳会議などで主導権を発揮して対中国包囲網構築の一番の推進役を務めた。
その長年の根気強い努力の結果、日米豪印による対中国の4カ国連携(クアッド)が形成され、中国封じ込めのための米豪英3カ国連携も出来上がった。そして2021年、独仏英3カ国の艦隊がアジアの海にやってきて米軍や日本の海上自衛隊との連携を強め、海から中国を包囲する態勢を作り上げた。
戦後77年の歴史において、日本の首相が地球規模の戦略理念を掲げて世界の主要国を動かして一種の国際秩序を作り出したのは、まさに安倍元首相が初めてだった。アジアと世界の平和のために残した元首相の遺産は極めて大きい。
安倍元首相の非業の死を悼み故人の遺徳と偉業を偲びつつ、その遺志を受け継いでアジアと世界の平和のための対中国包囲網の継続と強化を心に誓いたい。「安倍晋三死すとも対中国包囲網は死せず」は、われわれの合言葉である。
施 光恒(せ てるひさ) 九州大学教授
安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことは、日本にとって、また世界にとっても大きな損失である。日本や世界の行く末を左右してしまうのではないかと懸念する。
安倍元首相の魅力は数知れない。何よりも人に愛され、人々をまとめる力があった。国内・国外を問わずにである。国内での人気では長期安定政権をもたらしたことで明らかだ。海外においても、トランプ前米大統領をはじめ各国首脳と親密な関係を築いた。安倍政権が提起した「自由で開かれたインド太平洋」という構想は、米国も巻き込み、自由民主主義陣営の対アジアの基本戦略となった。
2012年末に安倍政権が成立したとき私は安堵した。外国人地方参政権、皇位継承、歴史教育など、国家の根本に関わる問題について心配する必要が薄れたと感じたからだ。
その反面、安倍政権の新自由主義に基づくグローバル化路線には疑問を感じることも多かった。本当に「みずほの国の資本主義」を目指すつもりはあるのだろうかと気を揉むことも少なからずあった。世界中が新自由主義路線を追求するなか、また国内では財界や財務省が強大な力を持つなか、致し方ない面も多々あったのではないかと推察する。政権を離れたのち、積極財政派を支援していたことからもそれはうかがえる。
安倍元首相は日本を心から愛した無私の政治家だった。遺志を継ぎ、日本の国柄を守り発展させ、より良き形で次々と来る世代に手渡していくことこそ残された我々の務めである。
竹田恒泰 作家
安倍晋三元総理の功績は多岐にわたる。そのなかでも、特に皇室に関することを申し述べ、追悼したいと思う。
小泉純一郎内閣が女性・「女系」天皇を容認する皇室典範の改正を試みるなか、秋篠宮妃紀子殿下の御懐妊が発表されたにもかかわらず、小泉総理は典範改正を進めるつもりだった。しかし、総理を全力で説得してこれを止めたのが、この内閣で官房長官を務めていた安倍氏である。その後に成立した第一次安倍内閣では、皇室典範の改正を白紙に戻すことを決めた。
もし、安倍氏がこれを阻止していなければ、皇位の男系継承は途絶するところだった。その功績は後世に語り継がれるべきものと思う。
また、平成から令和への皇位継承は、安倍内閣の偉業の一つとして特筆すべきことである。難題だった譲位特例法を成立させ、即位礼正殿の儀、大嘗祭、立皇嗣の礼などの一連の儀礼を恙なく済ませることができたのは、安倍総理の努力の賜物である。そして、後継の菅義偉内閣で皇位継承を議論する有識者会議が立ち上がり、女性・「女系」天皇を排除した結論が報告されたことで、男系継承の道筋が固まったといえる。
そして、今私たちが慣れ親しんでいる元号の「令和」を決めたのは安倍総理だということも記憶にとどめておきたい。
私たちは皇統護持について、安倍氏の存在に頼り過ぎていたのではないだろうか。安倍氏なき日本において、私たちが一層力を合わせることで、安倍氏に報いていきたい。