機関誌『日本の息吹』特別号【安倍晋三元総理追悼号】にご寄稿頂いた追悼文を
順次ご紹介させて頂きます。
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藤田文武 衆議院議員
威風堂々とした立ち居振る舞いの中に、親しみやすさとユーモアがある。私たち若手政治家が目指すべき理想の政治家像がそこにはありました。
私が初当選した2019年4月の衆議院補欠選挙。当時人気絶頂だった安倍元総理が対戦相手である自民党候補の応援演説に来られ、地元寝屋川市駅前には数千名の聴衆が集まりました。その後、私が予算委員会に初登壇した際の対戦相手が安倍元総理。地方創生について質問した私に対し、「私も先日寝屋川に行かせていただきました。ただし、相手候補の応援でしたが。」とユーモアを飛ばし、委員会室が笑いに包まれましたことが昨日のように思い出されます。時には「良い質問だったよ」などと、私のような他党の若手議員にも議場で気さくに話しかけ、激励してくださる方でもありました。
突然の凶弾に倒れられ、志半ばでご逝去された安倍元総理。私は他党所属であり、大変僭越ではありますが、尊敬してやまない安倍元総理の思いや志を受け継ぎ、憲法改正、安定的な皇位継承、教育の再生、安全保障の強化など、これ以上先送りにできない重要な国家課題に真正面から取り組んで参りたいと存じます。
戦後最長にして最高の宰相、安倍晋三元総理の御霊の平安を心よりお祈り申し上げます。
鍛冶俊樹 軍事ジャーナリスト
安倍元総理の最大の功績は「自由で開かれたインド太平洋」を提唱し主導したことだ。この構想は米国を始め世界各国の理解と賛同を得て、世界最大にして最高の平和構想となった。日本がかくも雄大な構想を世界に提示し実現に踏み出したのは歴史上初めてである。
だが安倍総理は、同構想を成功させるためには二つのキーがあることを認識していた。一つは台湾防衛であり、もう一つは中露連携の阻止である。従って平和安全法制などで日米同盟を強化し、一方ではロシアと、首脳会談を重ねたのである。だが2020年9月に安倍総理が辞任するや、ロシアは中国との連携を模索し始め、昨年10月には中露合同艦隊が日本を周回するに至った。
自由インド太平洋構想の瓦解を直感した安倍元総理は同年12月に「台湾有事は日本有事であり日米同盟の有事である」と発言し、日本の防衛費の倍増を政府に進言した。政府はこの進言を受け入れ防衛費の大幅な増額を約束した。
政府は年末までに国家安全保障戦略等を改定し、防衛力の大幅な強化のための具体的な計画を示すはずだが、厳しい財政事情のもと、財務省が防衛費の倍増に激しい抵抗の姿勢を示している。
倍増と現状維持を足して2で割って1・5倍増などと言うのでは、自由インド太平洋構想は確実に瓦解する。安全保障は成功か失敗かの二つしかなく、成功と失敗を足して2で割れば確実に失敗となる。
岸田総理よ、安倍元総理の遺志を継げ!
勝岡寛次 麗澤大学国際問題研究センター客員教授
安倍元首相が白昼堂々、テロの凶弾に倒れた。誰もが予想だにしなかつたことで、私は明治末年の、安重根による伊藤博文暗殺を想起した。二つの事件は、多くの点で共通点がある。
第一に、伊藤も安倍も長州(山口県)の出身だ。伊藤は松陰門下であり、安倍元首相も松陰を深く尊敬してゐた(晋三の晋は高杉晋作に由来)。二人は時代は違ふが、育つた風土や志を同じくしてゐる。
第二に、憲法との深い関はりだ。伊藤は大日本帝国憲法の立役者である。自ら渡欧して西欧の憲法を学び、我が国の伝統に立脚した明治憲法を制定した。安倍は終始一貫して、日本国憲法の改正を主張した。我が国の伝統にそぐはない、占領軍に由来する憲法だからだ。
第三に、伊藤は初代内閣総理大臣として、その歴史的評価は既に揺ぎないものがある。安倍の歴史的評価は定まつてゐないが、伊藤と並ぶ大宰相として、歴史にその名を刻むだらう。
国葬は、戦後では吉田茂に次いで二度目のことださうだが、憲法改正に終始消極的だつた吉田に比べ、「戦後レジーム」からの脱却を志し、憲法改正に人一倍熱心だつた一点をとつても、首相としての器量の大きさは際立つてゐた。安倍の悲願は、後を託された日本国民共通のレガシー(遺産)だと思ふ。
伊藤が非命に斃れた後の日本は、韓国を併合せざるを得なくなり、これが良しも悪しくも近代日本の歩みを決定した。安倍亡き後の日本は、憲法改正に踏み切るだらうし、さうならなければ日本の未来はない。来る安倍元首相の国葬は、その決意を込めたものにしたい。(正仮名遣、原文のまま)
桂由美 一般社団法人全日本ブライダル協会会長
ファッションデザイナーとして、私が安倍元総理の功績について書けるほどの知識は少ないのですが、十数年前、国際連合での地位が相当落ちていた日本を立て直し、G7やG20で影響力をもつようになったのは安倍政権の、外交の努力の賜物だと言えると思います。地球儀を俯瞰した外遊は81回を超え、訪れた国、地域は延べ176ヶ国に及び、日本に迎えた外国首脳の数も多く、特におもてなしの饗宴外交の見事さには、皆、舌をまいたと思います。
私は2018年、日仏友好160年を記念して、安倍総理と当時のフランス大統領であった、オランド氏の合意によって実現した「ジャポニズム2018響きあう魂」に参加しました。パリコレで発表した作品の中から、伊藤若冲、鈴木其一、葛飾北斎などの画家の造形美と、鮮やかな色彩のコントラストを、手描き友禅や西陣織、日本刺繍など、日本独自の染色技術を駆使した作品8点をエッフェル塔のそばの日本文化会館に展示しました。そして、2019年4月、総理大臣官邸、大ホールで感謝のつどいが開かれたのです。その招待状には、ラストに「ジャポニズム2018実施のために尽力して頂いた日仏両国の全ての関係者の皆様に感謝申し上げると共に、文化を通じた日仏の協力が、日仏関係のみならず、日本と欧州の未来に向けた、パートナーシップを一層豊かなものとし、日仏の感性の共鳴が、世界へと広がっていくことを心より祈念いたします。」と、安倍総理が最も望んでいたであろう言葉がつづられていたのです。
今、私は文化の交流を通じて諸外国とのパートナーシップを深めてゆくことに一層の努力をし、安倍総理の念願に応えたいと思っています。